俺の新妻~御曹司の煽られる独占欲~
結婚の発表って、しかも再来週って!
私の気持ちは完全無視の傲慢な命令に、怒りが湧いてきた。
反論しようと口を開きかけたとき、和樹さんと同年代くらいのスーツ姿の男の人がこちらに近づいてきた。
「副社長。こんなところにいたんですか」
和樹さんに向かってそう言った彼は、すぐそばに私たちがいるのに気づき、穏やかな笑みを浮かべ会釈をしてくれる。
彼は秘書さんなんだろうか。礼儀正しい彼の態度を見て、失礼で傲慢な和樹さんも少し見習えばいいのにと心の中で悪態をつく。
「帰るぞ」
短く言った和樹さんに、スーツの男性が「はい」と返事をしかけてから目を丸くした。
「帰るぞって……。顔合わせは?」
「結婚相手の顔は見て、最悪の女だということは理解したからもう十分だろう。必要だから結婚はするが、顔をつきあわせて食事をするなんて時間の無駄だ」
きっぱりとそう言い切った和樹さんに、秘書らしき彼は天井をあおぎ「あちゃー」というように額に手を当てる。
最悪の女って、私のこと……?
呆然とする私をちらりと一瞥すると、すぐに前を向き去っていこうとする和樹さん。
その後ろ姿に向かって、私の隣にいる隼人が叫んだ。