俺の新妻~御曹司の煽られる独占欲~
青ざめた私を見て、和樹さんは短く笑う。
「旅館を守りたいなら、大人しく俺の妻になれ」
私を人とも思っていないような傲慢な命令に、驚いて息をのんだ。
低い声でそう言い放つと、彼はこちらの返事も待たず背を向け歩き出す。
その背中に向かってなにか言い返してやりたかったけれど、なにも思い浮かばずただ唇を噛んだ。
ロビーに取り残され立ち尽くす私に気付いた秘書さんは、慌てたように頭を下げた。
「副社長が大変失礼いたしました。秘書の岸田穂積と申します」
そう言って差し出された名刺を、ぼうぜんとしながら受け取る。
「今回の非礼は改めてお詫びいたしますので、今日はこれで失礼させていただきます」
私と隼人に名刺を渡すともう一度頭を下げ、彼は和樹さんの後を追って去っていった。
ふたりの姿が見えなくなってから、私と隼人は力なく顔を見合わせた。
どうやら私はあの傲慢で冷血な男の妻になるしかないらしい。