俺の新妻~御曹司の煽られる独占欲~
「失礼します」と入って来たのはひとりの男の人。
「あ、穂積さん……」
和樹さんの秘書の穂積さんだ。
彼は私を見て、「これは、とても美しいですね」と褒めてくれる。
「素敵なお着物を用意してくださってありがとうございます」
頭を下げた私の後ろで着付けやメイクを担当してくれた女性のスタッフさんも微笑んだ。
「本当に素敵ですよね。色白の肌に真紅の着物が映えてお人形さんみたい」
「もう少し口紅の色を濃くしましょうか。緊張のせいか若干顔色が悪く見える」
「そうですね」
穂積さんとスタッフがそんなやりとりをしてうなずきあう。
「口紅を塗りなおしますので、こちらを向いていただけますか?」
うなずくと、スタッフの女性が私の顎に手を添え上を向かされる。
口紅を取った筆で唇をなぞられていると、また控室の扉が開いた。
誰だろう。
そう思ったけれどメイクの最中で振り返ることができず、鏡越しに背後をみやる。
するとそこにいたのは、驚いたような表情でこちらを見つめる和樹さん。
和装の私とは違い、和樹さんは三つ揃えのブラックスーツに光沢のあるシルバーグレーのネクタイを締めていた。