俺の新妻~御曹司の煽られる独占欲~
「なんでって、和樹がいつまでたっても鈴花さんに挨拶をしようとしないからだろ」
「だからって、勝手に行くか普通」
秘書の彼がこんなに傲慢で偉そうな和樹さんと対等に言いあう様子に驚いていると、私の表情に気付いた穂積さんがこちらに笑いかけた。
「私と副社長は昔からの幼馴染みみたいなものなんですよ」
「そうなんですか……」
「副社長に不満があるときは、遠慮なく私におっしゃってくださいね」
そう言われ瞬きをすると、和樹さんは不機嫌を隠さないしかめっ面で穂積さんのことを睨む。
「さぁ、お支度は済みました」
そう言ってスタッフの女性が私の顔から手を放し、立ち上がりやすいように椅子を引いてくれた。
「ありがとうございました」とお礼を言って椅子からたつ。
そして改めて和樹さんに向かい合うと、彼が息をのんだのがわかった。
ゆっくりと瞬きをして、私のことをじっと見つめる。
まっすぐな視線が熱を帯びていくような気がして、私の頬まで熱くなる。
意志の強そうな切れ長の目に、端正な顔立ち。フォーマルなスーツをまとった彼は色っぽくて、ただ見られているだけなのに勝手に鼓動が速くなった。