俺の新妻~御曹司の煽られる独占欲~
 

先祖代々受け継いできたこの旅館は市の有形文化財に指定され、長い時を経た今も現役で営業している。
歴史と伝統を守り続ける家業に誇りも愛着もある。

「じゃあいいじゃないか。結婚するまでここで働けばいい。なんならお婿さんをもらって継いでくれてもいいし」

言いよどんだすきに勝手に話を進める父に、私は眉間にしわを寄せて険しい表情を浮かべる。

「いーやーでーすー!」

お婿さんをもらって継ぐなんて、冗談じゃない。
そもそも実家で暮らし家業の旅館を手伝うだけの生活をしていたら、お婿さんになってくれるような相手と出会う可能性は限りなくゼロだ。

「だいたいこの旅館を継ぐのは、私じゃなくて隼人でしょ」

隼人は私の三歳下の弟で、今は東京の大学に通っている。
しかもひとり暮らしをして、思う存分羽を伸ばして自由を満喫しているらしい。


男と女とはいえ、この違い。理不尽すぎる。


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