俺の新妻~御曹司の煽られる独占欲~
「鈴花ちゃんは覚えていないと思うけれど、私たちは何度か会ったことがあるんですよ」
「そうなんですか?」
「鈴花ちゃんがまだ小さなころ日野屋に泊まってご挨拶したり、あと菊ちゃんの葬儀のときも見かけたわ」
その言葉に、私は背筋を伸ばして頭を下げた。
「祖母が生前大変お世話になりました。わざわざ遠いところまで葬儀に来てくださったのに、きちんとご挨拶もできず失礼しました」
「あらあら、そんな頭を下げなくてもいいんですよ。私は今、菊ちゃんとの約束が果たせて本当に嬉しいんですから」
「祖母との約束、ですか?」
「お互いの孫が大人になったら結婚させたいわねって話していたんです。和樹さんと鈴花ちゃんのふたりなら、きっと幸せな家庭を築けるって」
その言葉に、ちらりと和樹さんのことを横目で見る。
和樹さんは私と幸恵さんから少し離れたところで、招待客の男性たちに囲まれなにか話していた。
きっと仕事の話でもしてるんだろう。その整った横顔には愛想笑いひとつ浮かんでいない。
あんな傲慢で頭の固い男と結婚しても、幸せな家庭を作れるとは思えないんだけど。そもそも和樹さんは結婚になんの希望も理想も持っていないようだし……。
なんて思っていると、私の気持ちを見透かしたように幸恵さんがくすりと笑う。