俺の新妻~御曹司の煽られる独占欲~
 

「じゃあ隼人と鈴花のふたりで旅館を継げばいいよ」
「そんなの無茶でしょ」
「大丈夫だよ、ふたりは仲良し姉弟なんだから」

人が良くのほほんとした父にそう言われ、私は「そういうことじゃない!」と鼻にしわを寄せて抗議する。

「私は外の世界で自立したいの!」
「そんなことをされたら、お父さん心配で寿命が縮むよ」
「知らないよ、そんなの」
「じゃあ、鈴花はお父さんが早死にしてもいいのかい?」

とたんにしょんぼりした表情になる父に、私は唇を噛む。

「ぐぅぅっ!」

だからその、捨てられた子犬の顔はずるいってば!

「あら、またケンカしてるの?」

私と父が向かい合って頬をふくらませていると、母があきれたように言いながら居間に入ってきた。

「ケンカじゃなくて、交渉です」
「いつもいつも大変ねぇ」
「そんな他人ごとみたいに言わないで、お母さんもお父さんを説得してよ!」

私がそう言うと、母はこちらを見て涼しげな眉を片方持ち上げた。


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