俺の新妻~御曹司の煽られる独占欲~
「な、なに言ってるの! 手なんて出されてないからっ!」
変な想像しないで!と羞恥のあまり泣きそうになる。
「和樹さんが欲しいのは結婚してるっていう既成事実だけだから、そういう心配はいらないからね!」
『本当かよ』
電話の向こうの隼人は、私の言葉を疑うように言う。
『だいたい、こんなに急いで結婚しないといけない理由ってなんだよ』
「それは、わからないけど」
私もそれは不思議だったけど、あの和樹さんに聞いたところで『お前には関係ない』と切り捨てられるに決まってる。
『だったらあいつにわざと嫌われて、離婚するように仕向ければ?』
「どういう意味?」
隼人の提案に目を瞬かせる。
『あいつがどうして結婚しなきゃいけないのかわからないけど、姉ちゃんが嫌われるようなことばっかりして愛想をつかされれば、ほかに妻にふさわしい女を探すんじゃねぇ?』
「そんな、こちらは旅館に資金援助してもらうのに、わざと嫌われて離婚するなんて」
『じゃあ大人しくあいつの言うことを聞いて、好きでもない男と一生結婚生活を送る気かよ』
「それは……」
私が口ごもると、後ろから靴音が聞こえてきた。
誰かきたのかな? となにげなく振り返ると、こちらに近づいてくるのは和樹さんだった。