俺の新妻~御曹司の煽られる独占欲~
「こんなあまっちょろい父親ひとり言いくるめられなくて、ひとり立ちなんてできるわけがないでしょう。本当にこの家を出たいんなら、このお人好しを騙してでも脅してでも首を縦に振らせるくらいの根性と覚悟を見せなさない。そのくらいしっかりしたところを見せてもらえなきゃ、心配で自立なんてさせられないわ」
そう切り捨てられ私が口をつぐむと、隣で父が「静香さんかっこいい……」と頬を染める。
お父さんがお母さんにべたぼれなのはわかるけど、あまっちょろいとかお人好しとか、軽く貶されてることに気づいた方がいいいと思う。
「それより鈴花、帯頼める?」
そう言われ私はふくれっつらをしながらも、うなずいて帯を受け取る。
凛とした美人の母は、和装がとても似合う。
旅館の女将を務める母は、いつも着物姿で仕事をしている。
私も旅館でお手伝いをするときは仲居のひとりとして着物を着るけれど、女将である母は纏う着物もその気品も別格だ。