俺の新妻~御曹司の煽られる独占欲~
私が息をのんでいると、隣に立つ和樹さんがこちらを振り返った。
「どうした。この部屋では不満か?」
男らしく端正な顔に見つめられ、私は慌てて首を横に振る。
「不満なんてあるわけありません……!」
廊下から部屋の中に入ると、リビングだけではなくダイニングやキッチンも見渡せた。
使い勝手の良さそうなパントリーや洗面所、広いバスルームを見て回り思わずためがもれる。
御曹司の和樹さんが暮らすマンションだから、立派なんだろうなとは思っていたけど、これは想像以上の豪華さだ。
「気に入ったか?」
そう問われ、私は大きく首を縦に振る。
「もちろんです。フローリングにバルコニーに広いキッチンにジャグジー付きのお風呂……。こんなの、ドラマや映画の中でしか見たことありません」
「ジャグジーはまだしも、フローリングやバルコニーはどこにでもあると思うが」
首を傾げる和樹さんを無視して、私はスリッパでぱたぱたと床の上を歩く。
「旅館も母屋も畳敷きの日本家屋だったので、フローリングのリビングに憧れていたんです。どうしよう、今までずっと引き戸でドアに慣れてないから、スカートのすそを挟んでしまいそう」
そう言いながらリビングのドアノブを上下させてドアを閉める練習をしていると、和樹さんとその後ろに控えていた穂積さんがぶほっと噴き出して口元を手で押さえた。