俺の新妻~御曹司の煽られる独占欲~
「食事はたいてい外で済ませるから、気を使わなくていい。それに家のことはハウスキーパーに頼んでいるから鈴花がする必要はない」
「じゃあ、私は一体なにをすれば……?」
「なにもしなくていい」
「は?」
きょとんと目を瞬かせる私を、和樹さんが冷静な表情で見下ろしていた。
「俺はこの契約結婚で家政婦を買ったわけじゃない。素人が家事をするより金を払ってプロに頼んだ方が効率的なんだから、わざわざ鈴花がする必要はないだろ」
突き放したようなその言葉に、まるで私の存在なんてなんの価値もないんだと言われたような気がした。
彼にとって私はただの妻という名前の飾りで、窓辺に置かれた観葉植物みたいにただそこにあればいいと思っているんだろう。
むっとして眉をひそめると、和樹さんが不機嫌な私に気付き首を傾げる。
「もしかして、家事をするからその分の賃金を払えということか? わざわざそんなことをしなくても、さっき渡したカードを好きなだけつかってかまわないし、現金がほしければ……」
この人は、植物に水をあげるように女にカードを渡しておけばそれで満足するとでも思っているんだろうか。
そんな的外れなことを言う和樹さんめがけて、胸に抱きしめていたクッションを力いっぱい投げつけた。