俺の新妻~御曹司の煽られる独占欲~
もしかして、和樹さん……?
そう思いながら、不機嫌な声で「はい」と答える。
そっと扉が開くと、そこに立っていたのは和樹さんではなく秘書の穂積さんだった。
「先ほどは副社長が失礼しました」
穂積さんは悪くないのに頭を下げられ、私は慌てて首を横に振る。
「いえ、まったく気にしてませんから。どうせ愛のない契約結婚ですし」
大人の対応をしようと思ったのに不機嫌な気持ちは隠せず、拗ねた口調になってしまった。すると穂積さんの冷静な表情が崩れてぷっと笑顔になる。
「気にしてないようにはとても見えませんよ」
ぱんぱんにふくらんだ私の頬を指さされ、慌てて両手で顔を覆った。
「穂積さんも大変ですね。あんな偉そうで傲慢な人の秘書なんて」
「和樹も、悪気があるわけではないんですよ」
どこか柔らかい口調でそう言われ、目を瞬かせる。和樹さんのことを語る穂積さんの表情の柔らかさに驚いた。
「和樹さんと穂積さんは、親しいんですか?」
「うちの親は昔から大宮家に仕えていて、親戚みたいに育ってきたので」
「へぇ……」