俺の新妻~御曹司の煽られる独占欲~
偽りとはいえ、家族。その言葉に感情が揺れる。
「目的を達成するために感情を無視して道具にされる虚しさを、お前なら理解できるだろ?」
そう言われ、まだ幼かった頃の記憶がよみがえる。思い出したくもない忌まわしい記憶。
鈍い頭痛を感じて、額に手を当て顔をしかめた。
「だけど、これは愛のない契約結婚で彼女を愛する義務なんてない」
「それはわかってるけど、愛さないのと相手を無下に扱うのとは違う。これから一緒に暮らすんだから、少しは歩み寄れ」
容赦ない説教に耳が痛くて黙り込む。
そんな俺を見た穂積は、言いたいことを言って気が済んだというように息を吐き出した。
「ま、鈴花さんも言われっぱなしで拗ねるだけのお嬢様じゃなさそうだし、これからお前たちがどうなるか楽しみだけどね」
「勝手に楽しみにするな」
俺が睨むと、穂積は楽しげに肩を揺らした。