俺の新妻~御曹司の煽られる独占欲~
「すみません、ちょっとお鍋を落としてしまって」
そう言ってお鍋を拾う私のことを見下ろして、和樹さんは眉をひそめた。
「鍋を落としたって、火傷やケガはないか?」
真剣な声で問われ、思わず驚く。
うるさいって怒鳴られるかと思っていたのに。
「はい。空のお鍋なので、大丈夫です」
「そうか」
ほっとしたように表情をゆるめた和樹さんに、なんだか良心が痛む。
和樹さんに嫌われるために、失敗ばかりして愛想をつかされる努力をしている私。
傲慢で頭の固い彼だから、すぐにしびれを切らして出て行けと怒鳴られるんじゃないかと思っていたのに、こうやって心配されるなんて、予想外だ。
そんなことを考える私の後ろで、火にかけていた鍋がぐつぐつと音をたてはじめた。