桜ノ世界
「ヒロちゃんヒロちゃん」

「ん? どうした?」

サクラと出会って3ヶ月。

サクラは俺をヒロちゃんと呼ぶようになっていた。

「一緒に帰ろ~」

気の抜けた笑顔。

ふにゃふにゃの笑顔。

だらしのない笑顔。

だけど俺は嫌いじゃなかった。

「おう!」

そしたらサクラは少し寂しそうに口を開く。

「でもヒロちゃん、また男子にいじめられちゃう……」

サクラと一緒にいることで、確かにからかわれることもあった。

でも気しない。

(そんな顔しないでよ)

落ち込むサクラを見るとそう言いたくなる。

笑顔と明るさはサクラの中でも輝いている美点だから。
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