アンドロイドに眼鏡は必要か?
アンドロイドに眼鏡は必要か?
カスミはできあがったふたつの墓を見下ろした。

「あと、は」

きょろきょろと辺りを見渡し、近くの花壇から花を摘む。

きれいに整えられた花壇の花を失敬するのは良心が痛んだが、もうこの花壇を手入れする人間も、見て楽しむ人間もいない。

摘んだ花を簡単に花束にして、墓に供えた。

「ハーキース」

その名を口にすると、涙がまたこぼれ落ちる。
墓の前にしゃがみ込み、カスミは彼と最後の話をした。

「じゃあね、ハーキース」

涙を拭って、立ち上がる。
こうしてカスミは研究所をあとにした。



二年前、カスミは失踪したヴァレット博士の行方を捜していた。

ようやくたどり着いたのは山奥に隠れるようにひっそりと建つ、研究所。
< 1 / 32 >

この作品をシェア

pagetop