夢はダイヤモンドを駆け巡る
 今日はまだ四月六日
――始業式だというのに、ほとんどの生徒は始業式後、自宅にまっすぐ帰らず、この食堂に集った。

 食堂で昼食を食べながら、各々春休みの思い出話や新しいクラスの話題でしばしにぎわっていたいらしい。

 その気持ちはよくわかる。

 我々の高校の食堂は広くて清潔で、その上ステンドグラスが窓の至るところにはめ込まれているおしゃれぶりであるため、本来居心地がいい空間なのだ。



 とはいえど、今のわたしにこの空間の居心地の良さを味わうことなど、まず無理な要求である。

 というのも、

「私の話を聞いていますか、星野さん?」

「はいはい、聞いてますったら」

わたしの目の前にいるこの新三年生の男――小神忠作が、教室を出た直後のわたしを、虫を捉えるカメレオンの舌の如く迅速に捕らえたからである。
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