夢はダイヤモンドを駆け巡る

第2話

 そのせいなのだろうか。

 その日の夕方から夜にかけて、こんな出来事があった。

 小神と擦れ違った後、無難に六時間目の生物の授業をやり過ごした(無難に、というのは、教師から指名されなかったという意味である)。

 それから二年四組の教室でいつものようにショートホームルームを終え、部活に行く必要のないわたしと友人二人はゴールデンウィークの予定など他愛のないおしゃべりをしながら四組の教室を出た。

 もちろん、その一方で熱心に部活に出る生徒もいる。松本くんはその中の一人だ。わたしはちらりと彼を一瞥してから教室を去る。これはここ最近の習慣ともなっていた。

 小神に彼を観察するよう言いつけられてから、可能な時間帯は片時も目を離さないようになってしまっている……ような気がする。

 ゴールデンウィーク後に控えた実力テストの話などをしながら、我々はそのまま下校し、わたしは帰宅。頭の中には友人と交わしたテストの話がまだ残っているというのに、勉強をする気には何となくなれず、ベッドに直行し、いつの間に爆睡していたのか、起きたらすでに窓の外は真っ暗、水銀灯が光っていた。

 慌ててベッドから起き上がると、もう夕食の時間だった――ここ最近、ずっとこんな調子だ。

 学校が終わってから夕食までの間にしていたことは何か?と問われたら、「睡眠」の一言に尽きてしまう無為な時間の過ごし方に、軽い自責の念に苛まされる。

 しかし、どうしてこんなに眠いのだろう?

 一年生の頃だって、帰宅したら多少は昼寝することだってあったけれど、ここまでひどくはなかった。

 帰ったらお菓子を頬張りながらも一応出された宿題をこなすくらいの時間はあったのだ。

 だというのに、今はただ眠るだけ。生活が退化している。
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