夢はダイヤモンドを駆け巡る
 ともかく、本来ならば我々は関わり合うことがなかった生徒同士なのだ。

 だというのに、不幸なことに我々は面識がある。

 わたしがどれほど校内で慎重に小神との接触を避けようとも、あちらはわたしを見かければ百パーセント声をかけてくるものだから煩わしい。

 それも短時間では終わらないような話ばかり。校則に「ストーカー禁止」の項目が増えることを今か今かとわたしは待っている。

 生徒会の皆さま、よろしく頼む。




 それに、小神と出会ってからというもの、本当の意味での熟睡ができたことがない――ような気がする。

 さすがにこれは言いがかりなのかもしれないが、どことなく眠りが浅くなってやたらめったら夢を見るようになった。

 小神この野郎、わたしの安眠を返せ!……とはまだ口にしたことがないけれど。


 ちなみに、至極当然のことだけれど読者諸君に誤解があっては困るので念を押しておこう。

 わたしが眠れないのは決して「やだ、小神のことを考えるとドキドキして夜も眠れないの!」という甘酸っぱい不眠ではない。

 決してわたしは小神に異性として心を惹かれてなどいないし、それ以前に生物として人間としてだって興味のわく対象ではない。

 それでもわたしは、どういうわけか小神のことを完全に無視することはできないのだ。

 悔しいけれど、それだけはどうしようもないのだ――しつこいようだが、もちろん、恋ではない。
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