夢はダイヤモンドを駆け巡る
第4話
気付けばわたしは口を挟んでいた。
黙って小神の話を聞くつもりでいたのだが、どうしても押さえきれなかったらしい。口が勝手に動いていた。
小神が傷ついた――それも深く。それは今現在小神の話す口ぶりからして明らかな事実だった。
それを「取るに足らぬ」と言わせてはいけない――なぜか、そんな風に感じてしまったのだ。
わたしの唐突な指摘に小神は面食らった様子だった。目を見開き、わたしの顔を凝視する。
口は半開きだった。率直なところ、わたしが口を挟むなんて思ってもいなかったようだ。
そりゃそうだろう。わたしだってまさかこんなやや臭めの一言が口を衝いて出るだなんて予想だにしなかったのだし。
しばらくするうちに、わたしが口を挟むまでの間小神の顔に浮かんでいた悲壮感が、わずかながら減退したようだった。
こういう様子を「生気を取り戻した」というのかもしれない。目も普段通りの小神らしい目つきに戻っている。
そして小神はこくり、と二度頷き、
「……そう……ですね。星野さんのおっしゃる通りかもしれません」
口の端をほんの少しだけ引き上げた。
気を取り直すように、小神はグラスにたっぷりと残っていた水を一気に飲み干した。喉がごくごくと小生命のように動いた。
グラスをテーブルに置いてしまうと先ほどと同じ店員が慌てて継ぎ足しにくる。まるでこちらをずっと見張っていたかのような素早いサーブに、小神は驚かぬばかりかその店員がまるっきり視界に入っていないようだった。ただテーブルの上のどこでもない一点を見つめていた。
そして大きく息を吐くと、小神は何かを決心したような顔つきになった。
その直後、小神の口から出た言葉は、わたしにとって衝撃的なものだった。
小神はわたしの目にまっすぐ焦点を合わせ、強い口振りでこう告げた。
「正直のところ、未だに私はその時のことを気に病んでいます。しかし後悔はしていないつもりです。だからこそ、現在の私は星野さんに松本くんを救ってもらいたいという情念に駆られ、あなたの生活に首を突っ込んでいるのです」
「松本くんを、救う……?」
正直、小神が何を言わんとしているのかがその言葉からは汲みとることができなかった。
黙って小神の話を聞くつもりでいたのだが、どうしても押さえきれなかったらしい。口が勝手に動いていた。
小神が傷ついた――それも深く。それは今現在小神の話す口ぶりからして明らかな事実だった。
それを「取るに足らぬ」と言わせてはいけない――なぜか、そんな風に感じてしまったのだ。
わたしの唐突な指摘に小神は面食らった様子だった。目を見開き、わたしの顔を凝視する。
口は半開きだった。率直なところ、わたしが口を挟むなんて思ってもいなかったようだ。
そりゃそうだろう。わたしだってまさかこんなやや臭めの一言が口を衝いて出るだなんて予想だにしなかったのだし。
しばらくするうちに、わたしが口を挟むまでの間小神の顔に浮かんでいた悲壮感が、わずかながら減退したようだった。
こういう様子を「生気を取り戻した」というのかもしれない。目も普段通りの小神らしい目つきに戻っている。
そして小神はこくり、と二度頷き、
「……そう……ですね。星野さんのおっしゃる通りかもしれません」
口の端をほんの少しだけ引き上げた。
気を取り直すように、小神はグラスにたっぷりと残っていた水を一気に飲み干した。喉がごくごくと小生命のように動いた。
グラスをテーブルに置いてしまうと先ほどと同じ店員が慌てて継ぎ足しにくる。まるでこちらをずっと見張っていたかのような素早いサーブに、小神は驚かぬばかりかその店員がまるっきり視界に入っていないようだった。ただテーブルの上のどこでもない一点を見つめていた。
そして大きく息を吐くと、小神は何かを決心したような顔つきになった。
その直後、小神の口から出た言葉は、わたしにとって衝撃的なものだった。
小神はわたしの目にまっすぐ焦点を合わせ、強い口振りでこう告げた。
「正直のところ、未だに私はその時のことを気に病んでいます。しかし後悔はしていないつもりです。だからこそ、現在の私は星野さんに松本くんを救ってもらいたいという情念に駆られ、あなたの生活に首を突っ込んでいるのです」
「松本くんを、救う……?」
正直、小神が何を言わんとしているのかがその言葉からは汲みとることができなかった。