夢はダイヤモンドを駆け巡る

第4話

「ええ。それは全くもって新しい夢でした」

 川の向こう岸をそれまでじっと飽かず見つめていた小神は、突如、視線をわたしにやった。

 じっとわたしの目を注視し、瞬きすらしない。

 その視線の意図が分からず、わたしは戸惑う。というか、正直こんなに見つめられて気まずい。

 わたしが目を逸らそうとした直前、小神が口を開いた。

「それは、あなたの出て来る夢だったんです」

「――わたしが?」

 思わぬ返答。

 それまで野球の夢ばかり見続けていた松本くんが、ある日を境に突然わたしの出て来る夢を見た。
 
 それは合点のいかぬ答えだった。いや、不自然で理にかなわない予想外の答えといった方がいいかもしれない。

 何を隠そう、わたしと彼は――

「わたしたち、去年は別のクラスで、全く面識がなかったはずです。わたし自身、松本くんの名前さえも知りませんでした。もちろん、出身地域や中学校だって違います」

 去年――わたしたちが高校一年生のころのこと。わたしは一年三組だったが、松本くんは別のクラスだった。何組だったかは知らない。

 ちなみに、同じクラスだったが存在を忘れていた――なんてことは絶対にありえない。

 なぜならわたしの名前は「星野」で、彼は「松本」なのだ。

 出席番号は必然的に近くなり、定期テストでは間違いなく近くの席に座るはずである。

「合点のいかない様子ですね」

 わたしが顎に手を当て考え込む様子を見てか、小神が口を開いた。

「その通り、去年あなたと松本くんは別のクラスです。松本くんは当時一年一組でした。名簿を見る限り、星野さんは一組の構成員ではありませんでした。わたしは昨年度、松本くんの夢を見るようになってから彼の個人的なデータは可能な範囲で収集していましたから、この違和感にはすぐに気が付きました」

 あんたの情報収集力はすごいんだな。ちょっと引いてしまうレベルである。

 しかし、さっきから聞いているとやや気にかかることがある。
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