夢はダイヤモンドを駆け巡る
 これだけの言葉を一気に並べ終える。

 半ば出鱈目を並べ立てたつもりだった、のだけれど、わたしの言葉が松本くんに(良いか悪いかは別にして)響いていることは一目瞭然だった。

 目には憎悪に似た光が宿されていた。

「いいか、星野」

 まだ日暮れには遠いのにも関わらず、空が暗い。いつのまにこんなに雲が出ていたのだろう。

「反論があるならどうぞ」

 そう返したわたしの声は、歪んでいた。それに、何かがおかしい。わたしたち二人の出す音以外に、何も聞こえてこないのだ。車の走る音も、子どもが外で遊ぶ声も。

「反論なんてものじゃないよ。お前に俺の何が分かるんだって言いたい、それだけだ」

 視界が歪む。

 空が溶けた。

 雲は雲ではなくなり、空は不自然に濁った色あいに変わっていた。

 続いて道が、信号が、横断歩道が、街路樹が、家が、そして何もかもが溶け、松本くんもその中へ飲み込まれるように形を失っていた。
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