私の彼氏は真面目過ぎる!【完】

第三話 もう私は男で泣かない!

 養育費滞納男・翔馬と別れてからというもの、私は再び冷たく孤独で疲弊した心を抱える独身彼氏なしOLへと逆戻りした。

 私の自己肯定感はマイナスにまで減り込んだ。

 クズ男にまたしても引っかかってしまったことで、自分に自信が持てなくなったのだ。

 どうして簡単に翔馬のことを信用してしまったのか。

 どうして私には男を見る目がないのか。

 そもそも、本当に私は翔馬を好きだったのか。翔馬の口車に乗せられただけではないのか。

 だとすると、私は自分の感情さえも正確には理解できていないことになる。


――自分がわからない。


 それはあまりにも大きすぎる恐怖となって私の方に重く圧し掛かってきた。

 この時やっと私は悟った。


――幸せな恋愛は、自分をよく知り、自分を大切にできる人間にしか、やってこない。


 自分はどんな人間なのか。

 自分は何に価値を置いて生きていきたいのか。

 自分にはどれだけの価値があるのか。

 たとえ欠点があったとしても、どれだけ自分を愛することができるのか。

 自分の生きる意味は何か。

 こうした、人として最も大切なことを、今まで真剣に考えずに生きてきたツケが回ってきたのだ。

 足りない脳みそで、私は仕事帰りの電車の中、考える。

 私・朝井ひばりにとって大切なことって何だろう。

 朝井ひばりは、どう生きていきたい?

 学生時代は、ただただ美人じゃない自分を、可愛く魅せることだけが生きる目標だった。

 でも結局それって、他人の目に自分をどう映すかの問題でしかないんだ。

 誰かに綺麗と思われたい。
 誰かに好かれたい。
 誰かに愛されたい。

 それだけじゃ、駄目なんだ。

 心臓が、痛い。

 大きな難問に、心臓が潰されそうだった。
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