私の彼氏は真面目過ぎる!【完】
 私にも、なぜ浩太郎が何年も会っていなかった道川の現状が手に取るようにわかるのか、不思議だった。
 まさか当てずっぽうでもあるまい。

 道川はがくりと肩を落とした。

「研究も恋愛も全部ダメで。……もう何もかも捨ててハワイに移住したい気分だったんです。そしたら向かいから先輩が現れて。思わず突っかかってしまいました。恥ずかしい。本当に私、駄目な人間なんです」

 ハワイ!?

 しかし浩太郎はその点に突っ込まなかった。

「あなたは駄目ではありません。きっとこのスランプも持ち前の粘り強さで乗り越えられます」

 自信を持たせるためか、かなり一つ一つの言葉を強く発した。

「……先輩、私のど根性、覚えてくれてたんですね……」

 遠くからでも、道川さんが涙を浮かべ拭うらしき様子が見える。

 へーえ、彼女は粘り強い性格なんだ。

 どんな逸話があるんだろう。

 涙を拭くと、

「先ほどは失礼なことを言ってしまって申し訳ありません。先輩は本当は優しくて真面目ないい人です。お酒が悪いんですよね」

 やっとはにかんだような笑みを浮かべ、最後は「研究者同士」といった感じの握手を交わして道川さんは立ち去った。

 最後に深く私に一礼してから。
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