私の彼氏は真面目過ぎる!【完】
 何度出会っても、翔馬は頑なに仕事と住所を教えようとはしなかった。

「なんかひばりの彼氏って不誠実だね」

 大学時代の同期と女子会をした時のその一言で、私は目が覚めた。

「今回の彼氏も、やばいんじゃない?」
「遊ばれてるよ、それ」
「多分彼には他に女がいるよ」
「見る目ないよね、まじで」

 朝井ひばりが同じ過ちを繰り返していることを、友人たちはみな見抜いていた。

 力を込めた警告の数々に、私は腹をくくった。

「……ちゃんと何者なのか、確かめます……」

 どんな手を使ってでも、翔馬の正体を明らかにしなくては。

 翔馬のことを好きである気持ちに変わりはない。

 しかし、同じ失敗を延々繰り返しているわけにはいかない!



 そのチャンスは1週間後にやってきた。

 いつも通り唐突の「今夜飲もう」メールで飲みに出かけた私たちは、またしても色気あるムードになり、ホテルへ入った。

 独りよがりな翔馬の行為にも、今夜は目をつぶる。

 行為を終え、疲れ果てた翔馬の枕元に、私は缶ビールを差し出した。

 プルタブを開けた状態で。
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