それでも君を
えっ、もう?



心の準備が全く整っていない。



「梨央、早く。結局やらないといけないんだから、さっさと終わらせよう。」



「そう、なんだけどぉ…。」



少しくらい反抗したところで、颯くんは待ってなどくれない。



「はい、腕こっちね。親指中に入れてグーって握って。こらっ危ないから動くな!」



だって、怖いんだもんっ!



「チクッとするよ。
うん、オッケー、いいよ。力抜いて楽にして。」



はぁっ、痛かった。



颯くんがパソコンへ向かって何かを打ち込んでいる隙に、看護師さんが止血のテープをぐっと巻いてくれる。



「これ至急検査回してくれる?」



「分かりました。」



私の血液を持って診察室から出ていく看護師さんをぼーっと眺める。



あぁ、採血したらなんだかどっと疲れたな…。



そんな私の変化を見逃すような颯くんではない。

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