それでも君を
看護師さんが機転を利かせて、先生を呼ぶと同時に、私が吐いてもいいように準備してくれる。



「我慢できなかったらここに吐いても大丈夫ですよ!」



だけど、当の本人は吐きたくないのだ。



少し動くと吐きそうで、まともに返事すらできない。



そうこうしているうちに、水沢先生がやって来た。



「どんな様子?」



看護師さんが手短に報告をあげる。



その報告に軽く頷いた水沢先生が今度は私へと話しかけた。



「立川さん、お腹はどうかな?痛くない?」



腹痛はない。



それを伝えたくて、僅かに首を縦に動かす。



たったそれだけの動作で、吐き気は強さを増した。

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