それでも君を
「お待たせ。」



色々と物が乗っているカートを押しながら、颯くんが戻ってきた。



さっきと同じ場所に腰かけて、まずはノートパソコンで私のカルテを立ち上げる。



「あ、体温計鳴った?」



私の手の中にあるそれを見つけて、頂戴と颯くんがジェスチャーをする。



今さら隠してもしょうがないか…



これを見せて何もされないわけがないと思いつつ、腹を括って颯くんの掌の上へそっと体温計を置いた。



「高いなぁ。」



表示を確認した後、小さく呟いて、颯くんの視線はパソコンへと戻る。

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