それでも君を
ピピピっと体温計から電子音が聞こえるや否や、脇に挟んでいたそれは颯くんによってぱっと取り上げられてしまった。



颯くんが表示を確認して、呆れたような声を出す。



「どうしてこれで大丈夫だなんて言えるのか…。」



なんだか分からないけど、急にパソコンの画面に向かって何やら打ち込み始める颯くん。



「梨央、聴診した後は、血液検査な。」



「えっ、やだ!」



考えるより先に言葉が口から出る。



「やだじゃない。無理したのは梨央だろ。嫌ならもっと体調管理に気を使うべきだな。」



もう、嫌だ、こんな身体。



これからの予定を聞かされ、沈んでいた気分がさらに沈んでいく。

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