それでも君を
なんとか椅子に腰かけると、真っ先に颯くんの手が顔へと伸びてきて、下瞼をぐっと下げられた。



「ちょっと触るよ…。あぁ、これは…」



「…とりあえず血液検査しようか。」



そうなると思ってたけど、やっぱりか…



「や、だな…。」



ポロっと本心が口から溢れる。



ガタッ



急に颯くんが立ち上がったので、怒られるのかと思ったけれど、そのまま私を横抱きにして持ち上げ、そっとベッドへと下ろしてくれた。



「ごめんな、今は梨央の気持ち優先してあげられない。」



低く少し小さかったけれど、颯くんの優しさを感じられる声だった。



ベッドへと私を下ろした後、颯くんが看護師さんへと指示を出す。



「誰かバイタル測って。それと採血の準備お願い。」

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