それでも君を
「さてと、採血しちゃおう。」



颯くんが検査セットを手に、ベッドへと近付いてくる。



それをみてすかさずサポートに入る真ちゃん。



素晴らしい連携だけれど、私にとっては全く嬉しいものではない。



「大丈夫、暴れる元気、ないから。」



ベッドの上で大人しくしていたことと、酸素投与のお陰で大分会話も出来るようになり、サポートに入る真ちゃんにそんなことを言う。



「それはそれで…困る、かな。」



気付けなかったことを悔やんでいるのか、なんだか少し歯切れが悪い。



「俺は困んないけどね。よし、ちょっと我慢な。」



こちらはさすがの颯くんである。



気に止めることなく、さっと針を刺す。



腕に鋭い痛みが走った。


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