それでも君を
輸血が半分くらい終わったところで、真ちゃんが診察室へと戻ってきた。



すでに白衣を脱いで着替えている。



颯くんはPHSが鳴って、話ながらどこかへ消えてしまったまま、まだ戻ってきていない。



丸イスをベッド脇に寄せて座ると、心配そうな声で真ちゃんが話しかけてきた。



「気分どう?大丈夫?」



「うん、ありがとう。…真ちゃん、言えなくて、ごめんね。」



何を謝られているのか、瞬時に理解してくれた真ちゃんが優しい笑顔をみせる。



「ううん。言い出しにくかったんでしょ?」



私が自分から言わないことは、真ちゃんからすると周知の事実だったようだ。



その前提の上で、それでも見抜けなかった自分を悔やんで出た言葉が、“ごめん、気付いてあげられなくて”だったらしい。



「もし、また何かあったら、今度からは何でも言うようにするね。出来れば、だけど…たぶん…」



「ははっ、たぶん、なんだ。」



そう出来ればいいけど、その場面になってみないと、絶対出来る、という自信はない。



「できる範囲で伝えてくれると嬉しいかな。全く頼られないのはさすがに悲しいからさ。」



そう言いつつ、笑顔をくれる真ちゃん。



ほんと優しいんだよね…

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