それでも君を
コンコン



「来たよー」



ある日の昼下がり。



いつものように私は恵那ちゃんの病室を訪れた。



「あ、梨央先生ちょうど良かった!」



まだ日によって体調の変化はあるけれど、入院してきた時とは比べ物にならないくらい、薬の投与によって彼女の病状は持ち直してきていた。



そして、それに比例するように私たちの仲も格段に深まっている。



「なに?どうしたの?」



私が恵那ちゃんに近づこうと歩みを進めるとほぼ同時に、今しがた通ってきた病室の扉がそろそろっと開く。



飲み物を抱えて病室に入ってきたのは、ひとりの男の子だった。


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