それでも君を
「あっ、…ごめんなさい、私声にでてましたか?」



「はい、でてました。」



くすっと看護師が笑う。



「立川先生、本当に熱心に恵那ちゃんのこと診てますよね。」



「そう、かもしれないです。

彼女には…伝えたいことがありますから。」



恵那ちゃんの方を見ながら話す私につられてか、2人で同じ方向を見つめる。



なんだろう?と、不思議そうな顔をしていたが、それ以上の追求はされなかった。



看護師が業務に戻るのを見届けた後、こちらも電子カルテへと視線を戻し、今日の記録を付け始める。



しばらく作業に集中していたが、なにやらざわついた空気を感じ取って、手を止めた。



視線を室内へと移す。

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