それでも君を
薬を変更してから、熱は順調に落ち着いてきており、有り難いことに使用開始から数日経過した今も副作用はひとつも出ていない。



病気は少しずつ良くなっているみたいだけれど、水沢先生との仲は特段変化なしである。



毎日のように会話はしているから、最初に比べると仲良くはなっているけれど。



「あー暇だよー。」



「それは元気になってきた証拠ですね。」



水沢先生がニコニコと答える。



「嬉しそうだねぇ。厄介な患者は早く退院してくれた方が嬉しいもんね。」



嬉しくされたことがなんだか嬉しくなくて、可愛くない発言をしてしまう。



「そういう意味じゃありませんっ。ただ僕はっ…」



「はいはい、分かってますよー。」



言い訳なんか聞きたくない。



「立川さんは将来やりたいこととかないんですか?」



どこから飛んできたのか分からないような急な質問に言葉が詰まる。


えっ、、、



なに、急に…



「…こんな身体でも、出来ることある、かな?」



言った後に水沢先生を見上げると、少し悲しそうな顔が眼に映った。

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