それでも君を
スマホで特にやりたくもないゲームなんかしたりして気を紛らわしていると、前の掲示板に自分の受付番号が表示され、診察室Bへ入るよう促された。



待ちくたびれたのと、気が進まないのとで診察室へと向かう足取りは重い。



ドアはすでに看護師さんが開けて待ってくれていて、笑顔を添えて迎え入れてくれた。




「ちゃんと来てくれたんですね。」




一歩踏み入れた途端、笑顔の水沢先生からそんな言葉がかかる。



「あれっ、颯くんじゃない…?」



「あ、青城先生今ちょっと手が離せないので、今日の外来は僕が引き受けました。」



へぇー、颯くん忙しいんだな。



もしかしたら今までは私のために無理してくれていたのかもしれない。



「…そうなんだ。」



「はい。とりあえず、ここ座りましょうか。」



そこに座ると終わりな気がするけど、ここまで来たらもう座るしかないよね。



「血液検査、嫌だったでしょう?けど、ちゃんと受けてくれたんですね。」



画面上で何やら検査値を確認しながら話す水沢先生へと近づいて行き、言われた通りに椅子へと腰を下ろした。


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