それでも君を
先生の言葉にハッとした。



今までなぜこんなに診察が苦手なのか考えたこともなかったけど、これから悪い結果を伝えられるのが怖いからだったのかもしれない。



また入院って言われたらどうしよう。



追加で検査しましょうって言われたらどうしよう。



そんな思いが心にあって、怖いという感情になっていたのかも。



今更ながら、そんなことに気付く。




「…結果が悪かったら、って思うと、怖い。」



さっきまで言えなかった言葉が、先生が聞いてくれたお陰で今度は素直に言えた。



「そうですよね…。その気持ち、すごくよくわかります。不安で不安で、どうしようもなく怖くなるんですよね。」



困った顔を見せることなく、先生は優しく微笑んでいた。



「先生も…?」



「はい。僕は正直今でも怖いです。検査結果が悪いということは、また治療しないといけないって事ですからね。一瞬にして辛かった記憶が蘇ります。」



私と一緒だ。



なんだか少し、安心してきた。

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