世界で一番、不器用な君へ


片付けの後だったので、あたりはもうすっかり暗くなっていた。


「蓮と一緒に帰るのかと思ってた」


「え?」


先輩の唐突な言葉に私は驚く。


「いやいや、そんな毎日一緒に帰るほど仲良くは…」


「そうか?…アイツは才能あるし、ガッツもあるけど、たまに危なっかしい」


「それは同感です」


「そういうところ、一花にそっくりだ」


「や、やめてくださいよ!あんな奴に似てるなんて…」


先輩は笑って、私の頭に手を置く。


「ま、マネージャーとして見守ってやってくれ、蓮のこと」


「…蓮だけじゃなくて、みんなのことちゃんと見てますよ。もちろん、大和先輩のことだって」


先輩は優しい顔をして、私の頭を撫でる。


「お前に見てもらえるのは、安心するな」


また、そうやって…


「もう!子供扱いしないでください!」


私は先輩の手を持ち上げて、頭からどかす。


「いや、違う違う、そういう意味じゃなくて」


むくれた私に、先輩が慌てる。


なんだか、新鮮だ。


「ふふ、もういいですよ!私はどーせガキですし」


…先輩の隣で、綺麗に笑う、ユカさんとは大違いだ。


そう思って、胸が苦しくなる。

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