世界で一番、不器用な君へ
…って、先輩とせっかく帰れてるんだから余計なことは考えない!
気持ちを入れ替えようとした、その時。
「一花」
大きな優しい手が、私の手首を掴む。
その熱に、心臓が、跳ねた。
「せん、ぱい?」
先輩の真剣な表情に、自然と体温が上がっていく。
「子供扱いなんて、してない」
「あ…」
言葉が、出ない。
「信じてくれた?」
「…は、い」
なんとか言葉を返すと、先輩はいつものように優しく笑って、私の手を離した。
「あ、そうだ。いつも一花には世話になりっぱなしだからさ、なんか、欲しいもんない?俺にできる範囲なら、なんでもあげるよ」
「ええっ!?」
なんでも、なんて簡単に言わないで欲しい。
先輩は、知らないから。
私がこんなにドキドキしてることも。どれだけ先輩が好きかも。
だったら、私の彼氏になってください、なんて、言えるわけもなくて…
これが、せめてもの、私の勇気。
「…ハチマキ」
「え?」
「ハチマキ、交換してくれませんか?」
顔が熱い。
顔が赤いの、きっと先輩にバレバレだ。