世界で一番、不器用な君へ


「いいよ」


「えっ…いいんですか!?」


思わず先輩の顔を見上げる。


「ふはっ、一花、喜びすぎ」


「だっ、だって…」


喜ぶに決まってる、こんなの…


断られるかと思った…よかった…


「あ、あの、じゃあこれを…」


私は急いで自分のハチマキを渡す。


「さんきゅ。…ん?これ…」


戸惑う先輩に、私は首をかしげる。


「西条って書いてあるけど」


…へっ!?


「そっそんな、え!?」


先輩の手から受け取ったハチマキの端に、ゴツゴツした字で書かれた「西条」の文字。


ちょっと…まさかあのとき!?


「アイツ、自分の方渡して…」


最悪だ、間違えたんだ。


なんで確認しなかったんだろう…


せっかくの、チャンスだったのに…

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