世界で一番、不器用な君へ
2人の距離感
家について、ベッドにダイブし、ぼーっと天井を見つめる。
いつもより、近い距離。
シトラスの制汗剤の匂いと、低くて、でも優しい声。
「うわああああああ」
ニヤつきながら顔を抑えてジタバタする私は、側から見れば完全に変人だ。
そのとき、場違いな電子音が部屋に鳴り響いた。
私は勢いよく体を起こして携帯を耳に当てる。
「はいっもしもしっ」
「…なんだよ、気持ち悪いな」
強張った体が力を失う。
「…なんだ、蓮か」
変なタイミングでかけてこないでよね…
「おい、普通は泣いて喜ぶぞ?」
「自分で言うあたりがどうかと思うけどね」
ほんと、性格悪い。
「で、どうだったんだよ」
蓮の言葉に、再び記憶を反芻する。
こんなに幸せなことがあっていいのかな…?
「なんだよ、こっぴどく振られたか?」
失礼だけど、意外と深刻な声で聞いてくれるんだ。失礼だけど。