世界で一番、不器用な君へ


「ハチマキまで交換してもらって?距離まで近くていい感じだったんだろ?」


「う…」


そう言われてしまうと、それは…頷けない。


そもそもハチマキだって欲しいって言ったの私だし。


先輩優しいから断らないと思うし…てかあの状況で断れないし!?


てかいつも迷惑かけてるお礼って…それ中学の時から立ち位置変わってないような…


「…私、一人で舞い上がってるかも」


「なんだよ、喜怒哀楽の激しいやつだな…まあ確かにまだ確実とは言えねぇな。ま、また作戦考えといてやるよ」


「蓮様…!」


性格悪いなんて言ってごめん。


「そういや一年の女子が今日の写真撮ったって送ってくれたけど、お前の走ってる時の顔がゴリラすぎてウケるから見てほしい」


前言撤回、いっぺん死ね。


あ…一年生といえば。


「ていうか今日ハチマキ交換するの断ってたよね?しかももう交換したとか言ってたよね?」


なんで?たまたまじゃないの?


「あー、断る理由になるかと思って」


「…そんな理由で私を犠牲にしたのね。…来週ちゃんと返すから、もうそんな風に嘘つくのやめなよ。蓮のこと、本気で好きなんだよ?その子も、他の子だって」


「んー…」


って、私が言うことでもないけどさ。


「ま、まあとりあえず!月曜日には返してね、ハチマキ」


「…嫌だ」


「は?」


「あれはもう俺がもらったから」


「えっ…いやいやいやいや、話聞いてた?」


なに、急に不機嫌…?


「俺は返す気ないし、だいたいお前は俺に弱味握られてること忘れたわけ?」


蓮の不敵な笑みが、脳裏に浮かぶ。


「ちょっ…」


「じゃ、そういうことだから」


一方的にそう告げられ、電話は切れた。

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