世界で一番、不器用な君へ


「お、主役登場〜」


「楓っ」


女子達が今度は一斉に蓮に詰め寄る。


「蓮くん、一花のこと好きなの!?」


シン、と教室が静まり返る。


ハチマキのこと、電話の不機嫌そうな声、二人三脚で大丈夫だって言ってくれた時の真剣な顔。


いろんな蓮の顔が頭にぐるぐる回って…


蓮が、ゆっくりと口を開く。


「はあ!?どっからそんな話になったんだよ、ていうか前からずっと違うって言ってんだろ。俺がいくら面食いだからってバカにすんなよ…」


…ん?あれ?


「だっだよねー」「そうだよね、私もデマだと思ったもん」「この二人に限ってね」「うん、ないない」


安堵の表情が女子達の間に広がり、途端にみんな好き勝手言い始める。


「ってちょっと!なんなのよみんなして!ていうか蓮!お前なんて私の方が願い下げだっつーの!ほんと性格ひんまがってるわね…いつか顔まで歪むよっ」


「うるせえなまずは人間になってから言えよゴリラ女!」


いつも通りの展開に、いつのまにか騒ぎは消えた。


浩平と楓に止められて、私たちはやっと口論をやめる。


「ほんと、やなやつ」


ちょっとでも不安に思ったりして、バカみたい。


…て、何を不安になんて…


私たちの間には、別になんにもないのに。


「一花、大丈夫?」


「なにがよ」


ちょっとやりすぎた?


そう言う楓を軽く睨んで私はため息をつく。


ほんと、なにしてんだろ。

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