世界で一番、不器用な君へ
そうは言ったものの、結局チャンスはなくお昼休みに。
「ごめん楓、きょうお弁当ないんだわ買ってくる」
「おけー」
私は少し早足で購買部に行く。
「ああっ、やっぱり混んでる…」
相変わらずの生徒の量に、私はげんなりする。
パン残ってるかなあ。
「げ、お前またカレーパン?」
「別に、浩平が変え過ぎなんだよ、てかなんだよその不味そうなやつ」
「あっお前そういうこと言うなよ!これは期間限定の納豆入りスペシャル…」
「あーはいはい、騙されてんのお前くらいだよ」
知った声に、思わず目を向ける。
思った通り、そこには浩平と蓮がいた。
周りの女子たちがキャーキャー言ったり、興奮しながら見つめているけど、気づいてないのか慣れてるのか蓮は無反応だ。
「あ、一花〜珍しいな」
ぼーっと見つめていた私に、浩平が気づいて手を振る。
いや、今気まずいんだって…!!!
…でも、これはもしかしてチャンスじゃ!?
「あっ…」
「いくぞ、浩平」
駆け寄ろうとした私の横を、蓮は通り過ぎて行った。
「あ、おい!…じゃな、一花」
「あ、うん」
後ろで、浩平が蓮を追いかける声が聞こえる。
…なんか、今のは、すごいズシンときた。
一瞬熱くなった目を、私は慌てて上を向いて堪える。
私、勝手だ。
かまわないでって言ったのは、私なんだから。