世界で一番、不器用な君へ
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ジュースをコップに入れて部屋に戻り、俺は絶句する。
「ん〜もう立てません…」
聞いたこともないくらいヘロヘロの声で、一花はソファーの上で寝転がっていた。
「な、んだこれ」
「一花、大丈夫か?」
真っ赤な顔でふにゃふにゃ言う一花に、キャプテンが何度も声をかけているが…
当の本人は大好きな相手を目の前にしていると言うのに全然わかっていないようだ。
「なに、どういう状況?」
俺がさりげなく浩平に聞くと、大三の先輩が代わりに答えてくれた。
「いや、俺が飲んでたお酒間違えて飲んじゃったみたいでさ。つっても一杯もなかったんだけど、まさか雨宮ちゃんがこんなに弱いとは…」
ああ、なるほど。
…それにしても皆、見過ぎじゃないか?
「いやあほんと、雨宮は黙ってればかわいいんだよなあ」
ちょうど寝っ転がっているので、頭が大一の先輩の上に乗っている。
てかスカート、めくれそうだろうが!
チラチラと一花を見る一年に、俺はイラついた。
「一花、送るから起きて」
「んーまだ帰らないっ!もっと遊ぶもーん!」
キャプテンの言う事もこれっぽっちも聞かない。
「まあまあ大和、そこどけ」
大一の先輩はそう言って一花の腕をそっと撫でた。
「雨宮、どこまで触ったら起きるかゲーム!」
「先輩!ふざけないでください!」
「なんだよ大和、ノリ悪いな。雨宮はそんなんじゃ怒んねえって。しかも、静かな雨宮はなんかそそる」
「先輩、いい加減に…」
「そこ、邪魔です」
俺は先輩の腕を思い切り引っ張る。
「いってえな、なにすんだよ蓮!」
俺は先輩の抗議を無視して、一花の前にしゃがむ。
頭を置いていた膝がなくなって、一花はソファーに完全に頭をついた。
「いーたーいー!」
「おい、酔っ払い」
…まあ、キャプテンの声も耳に入らなかったんだ。俺のが聞こえてるはずがない。
「帰るぞ、ゴリラ」
俺は一花の背中と膝の裏に手を入れて、持ち上げる。
…軽い体。
人生初の姫抱っこが、まさかのこいつだなんて。まあ、不可抗力だ。
「先輩方、それじゃお先に」
ポカンとする先輩たちを尻目に、俺はさっさとカラオケルームを出た。
「やだやだ帰んないばかー」
「暴れんなアホ」
ジタバタと腕や足を振り回す一花を、もう一度抱え直す。
ジロジロと負けられる視線を無視して、俺は無心で歩く。