世界で一番、不器用な君へ


しばらくして繁華街を抜け、住宅地に入り、目当ての公園に入ってベンチの上に一花を下ろした。


「水、買ってくるから」


そう言って立ち上がったが、手を掴まれてしまう。


「…なんだよ」


「いーやー」


…ほんっとにとことんめんどくせえな!


「あーはいはい、何がお望みですかおじょーさま」


「ん…れんに、ごめんねって言って」


「…別に怒ってねえよ」


俺はその場に再びしゃがむ。


「お前に、迷惑かかると思ったから」


こいつは、キャプテンのことが好きで。


なのに、俺との根も葉もない噂が流れることで後輩にも冷たい目で見られ、同級生に問い詰められ、先輩に呼び出され。


それで、キャプテンにもし誤解なんてされたら、協力どころじゃなくなる。


…ちゃんと、そうやって言えばいいんだけどな。


「…ごめんな、回りくどいことして」


余計に悩ませてたかもしれない。


「ん…っこ」


「ん?」


「おしっこ」


…はっ!?


「なっお前…」


「もれちゃうーはーやーくー」


俺は慌てて周りを見渡す、が、あいにくこの公園にトイレはない。


「おい一花、お前家どこだよ、送ってくから!」


「もーれーるーはーやーくー!」


ほんっとにお前ってやつは!


俺は慌てて一花を背中に乗せ、公園を後にした。

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