世界で一番、不器用な君へ


***


キュ、キュ、とスパイクが床をこする音があちこちで響き渡る。


私はメニューをちらりとみてホイッスルを鳴らす。


「はい、次ー!」


大丈夫、順調だ。


「一花」


ドクン。胸が、大きく鳴る。


「…お疲れ様です、大和先輩」


汗を拭きながら、先輩はにっこり笑う。


「今日も順調だな。さすが、頼りになるな」


大きな手が頭を撫でる。このあたたかさが、中学の頃からずっと好きだ。


「先輩、左足痛みます?」


「…ほんと、さすがだな」


一花にはお見通しだ、そう言って笑う先輩に、私は「マネージャーですから」と何気ない返事をする。


「テーピングしますね」


「悪い」


私の鼓動は、先輩といる時はいつも少しだけ大きくて、速い。


中学1年、先輩のプレイに一目惚れして、バスケ部に入って、マネージャーとして支えてきて。先輩が卒業する時に、「寂しくなるな」と言われて同じ高校に入ることを決意した。


そして、またマネージャーとして1年側にいた。


ずっと、ずっとみてきた。


先輩のこと、分からないわけ、ない。

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