世界で一番、不器用な君へ
「お風呂、ありがとうございます」
「あらー!お肌ツルツル!かわいい!」
「いやぁ…」
きゃっきゃとはしゃぐ蓮のお母さんの前で、ギクシャクしてしまう私。
こんなに褒められることもなかなかないので、どんなリアクションをしていいのかわからない。
「ちょっとしたものなんだけどね、スープ作ったからのんでね」
「わ!ありがとうございます!」
促されるまま私はダイニングテーブルに座る。
トントン、と廊下から足音が聞こえて、ドアが開いた。
「出た?」
「あ、うん、お先」
「…ぶはっ、卵みてえ」
「うるっさい!」
ほんっと、この男はデリカシーがないんだから…
よくこれでモテるよね。
あ、他の子には違うのか。
「もう、蓮!さっさと入ってきなさい!」
「へーへー」
お、お母さんには逆らえないのかな?
蓮は素直にお風呂場に向かったみたいだ。
「はい、一花ちゃん、どーぞ」
「ありがとうございます!」
いろんな野菜が入ったトマトスープ。
いただきます、と言ってスプーンで口に運ぶ。
「おいしい!!」
「ほんとー!よかった〜」
綺麗で、おちゃめで、料理上手で。
きっとモテたんだろうな〜
「で、一花ちゃんは蓮と付き合ってどれくらいになるの!?」
思わず野菜スープを吹きそうになった。
「いやっ!私たちはそんなんじゃ!」
「ええー?」
「あの、ほんとに…友達です。仲良くさせていただいてます。」
「なんだー!可愛い子連れてきたからてっきり…」
「ははは…あ、バスケ部のマネージャーをやってるんですけど、全然、女として見られないっていうか…そういう対象になれないみたいなんですよね、私」
って、自分で言っててちょっと悲しい。