世界で一番、不器用な君へ
「本当にお世話になりました」
玄関で深々と頭を下げる一花に、母さんが抱きつく。
「絶対またきてね!絶対よ!」
「はい!また来ます〜」
熱い別れをしてから、俺たちは玄関を出た。
「ていうか一緒に登校していいのか?なんかお前色々気にしてただろ」
「いいの!もう考えるのやめた!私は私の生きたいように生きる!」
「ま、吹っ切れたならよかったけど」
「その分、もっとちゃんと大和先輩にもアピールしたい」
珍しく前向きな意見に、俺は驚く。
「へえ、なんか考えてんの?」
「…それは、まだだけど」
…そういうところは相変わらずなんだな。
「まあ夏も来れば毎日部活で…」
夏。
「…蓮?」
急に口を閉ざした俺の顔を怪訝そうに一花が覗き込む。
「夏祭り…それだ!夏祭りに、キャプテンを誘うんだよ!」
「ええええええ!」
夏といえば祭り。浴衣。花火。
そして、告白。
我ながら良案だ。