世界で一番、不器用な君へ
「はい、できましたよ」
「サンキュ」
ぐしゃり、と頭を撫でられ、私は少しだけむくれてみせる。
「もう、子供扱いしないでくださいってば!」
「悪い、ついクセで」
「今日は絶対全力でやらないでくださいね。テーピングしてるとはいえ、無茶はダメです。無理したら、わかりますからね?」
「…わかったよ、お前の言うことは聞いた方がいいって長い付き合いだからわかるよ」
先輩は降参、というように両手を上げて優しく笑う。
「キャプテン、はじめますよー」
「おー、今行く」
ありがとな、と言って頭に再び掌がのせられる。
チームのところに戻っていく先輩の背中をみて、胸がぎゅっと締め付けられる。
子供扱いしないで、は、半分本当で半分嘘だ。
最初は本当に憧れで。それが、いつからか別の感情になってた。
4年目なのに、先輩と話すとき、私の心臓はいつもうるさい。
頭を撫でられるたびに胸が少しだけぎゅっとなる。
特別扱いされてるみたいな、そんな嬉しさと、子供扱いされてることへの、身勝手な寂しさ。
先輩の中で、私は永遠に「妹みたいな後輩」だから。
それを、痛いほど知ってるから。